今日は、10年ほど前に書いた『永遠平和のために(カント)』のメモを記載した。
シンデレラ |
200年以上前に書かれたこの本は、大哲学者カントが晩年(71歳の時に初版)、永遠平和を希求して著したものだ。訳者は解説で、カントはこの原理を更に展開したいと語っていたが実現しなかった、と述べているように、本書には原理しか書かれていない。しかし、それが却って原理を際立たせてくれる。現実を追認して肯定する視点からは、永遠平和を達成する原理を理解することの大切さは見えてこない。だから、今でも読む価値がある。
内容をかいつまんで記述してみると次のようになる。本の構成は二つの章と二つの補説および付録二項からなっている。第一章は、人類がこのまま行けば戦争により滅亡するであろうことを防ぐための条件が書かれていて、六つの条項から成っている。特に有名なのは、「常備軍は、時とともに全廃されなければならない」という条項である。
第二章は、永遠平和のための三つの施策が書かれている。その施策とは、国家は共和制でなければならないこと、国際関係は自由な諸国家の連合制度に基礎を置くべきこと、世界市民法は普遍的な友好の諸条件(征服ではなく、友好的な訪問の権利が認められ、それが次第に世界市民体制へと近づける、という考え)で規定されるべきこと、である。
補説では、それらの根拠として主として自然の合目的性(カントの言う目的性については『判断力批判』に書かれている)を挙げている。
付録では、基本的にカントの定言命法(『実践理性批判』に出て来る命題で、「自分の行為のルールが、同時にいつでも誰にとっても妥当なルールとなるように行為せよ」というもの)と義務を求める道徳哲学に基づいた議論がなされている。
その他、政治と道徳の二律背反(二律背反=アンチノミー、に関しては『純粋理性批判』に書かれていて、とても面白い)公表性をキーワードとして一つの原理を提出している。