自己紹介

自分の写真
1946年9月、焦土と化した東京都内にて、食糧難と住宅難と就職難の中、運良く生き抜いた両親の新しき時代の一発目として生を受けるも、一年未満で感染症にて死にかける。生き延びたのは、ご近所に住む朝鮮人女性のもらい乳と父親がやっと手にした本の印税全部を叩いて進駐軍から手に入れたペニシリンのおかげであったらしい。ここまでは当然記憶にない。記憶になくても疑えないことである。 物心がついた頃には理系少年になっていた。それが何故なのか定かではないが、誤魔化しうるコトバより、誤魔化しえない数や図形に安堵を覚えたのかもしれない。言葉というものが、単なる記号ではなく、実は世界を分節し、意味と価値の認識それ自体をも可能にするものであることに気付きはじめたのは50歳を過ぎてからであった。 30年間程の企業勤めの後、現在は知の世界に遊ぶ自称哲学徒、通称孫が気になる普通の爺~じ。ブログには庭で育てている薔薇の写真も載せました。

2021年5月3日月曜日

5月3日(月) NHK100分で名著『資本論』(斉藤幸平)

パパメイアン
 NHKのこのシリーズで、カール・マルクス著『資本論』がどう紹介されているのか興味があったのでkindle版で読んでみた。わかりやすく簡便に名著を紹介するという本シリーズの主旨に則って書かれている本書において、先ずはじめに浮き出てきたキーワードの一つがマルクスの「物質代謝論」であったのには、おやっと思った。多分、著者の社会思想の軸足がここにあったのかもしれない。なので、著者が書いた「新人世の『資本論』」という本を読んでみようと思っている。

資本論を構成する基本概念である「富」「商品」「使用価値」「交換価値」「労働」「労働力」「労働時間」「剰余価値」「資本の運動」などについての解説が簡便に為されて、大部であるこの名著全体の概略も紹介されている。ただ、資本論の「労働日」や「機械と大工業」などの章で示されている事例よりも、現代の身近な事例を引いて行われているので、読者にとってはわかりやすいとしても、人びとの生活・経済の悲惨な歴史的事実から読み解かれている「資本主義的矛盾」に対するマルクスの怒りの気持ちの方はあまり伝わって来ないが、それも仕方がないだろう。

参考になったのは、「MEGA」と呼ばれるマルクスに関する国際研究が進んでいて、その成果が公開されはじめている、という部分と、『資本論』第三巻の草稿からの次のような引用でした。<資本主義に代わる新たな社会において大切なのは、「アソシエート」した労働者が、人間と自然との物質代謝を合理的に、持続可能か形で制御することだ>。ここで著者によれば、アソシエートする、とは共通の目的のために自発的に結びつき、共同する、という意味だそうです。マルクスは、このアソシエートする条件についてはどう考えていたんだろうね。