自己紹介

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1946年9月、焦土と化した東京都内にて、食糧難と住宅難と就職難の中、運良く生き抜いた両親の新しき時代の一発目として生を受けるも、一年未満で感染症にて死にかける。生き延びたのは、ご近所に住む朝鮮人女性のもらい乳と父親がやっと手にした本の印税全部を叩いて進駐軍から手に入れたペニシリンのおかげであったらしい。ここまでは当然記憶にない。記憶になくても疑えないことである。 物心がついた頃には理系少年になっていた。それが何故なのか定かではないが、誤魔化しうるコトバより、誤魔化しえない数や図形に安堵を覚えたのかもしれない。言葉というものが、単なる記号ではなく、実は世界を分節し、意味と価値の認識それ自体をも可能にするものであることに気付きはじめたのは50歳を過ぎてからであった。 30年間程の企業勤めの後、現在は知の世界に遊ぶ自称哲学徒、通称孫が気になる普通の爺~じ。ブログには庭で育てている薔薇の写真も載せました。

2020年10月25日日曜日

10月23日(金)『チェンジング・ブルー 気候変動の謎に迫る』大河内直彦 岩波現代文庫

ハニーブーケ

  大河内さんの著作で読んだのはこれで三冊目となるが、他の二冊は既にこのブログで紹介している。本書は2008年初出で第25次講談社科学出版賞を受賞している(岩波現代文庫版は2015年)。今回のテーマは書名の副題にあるように「気候変動の謎に迫る」というもので、サイエンスライターとしての著者の主著と言えるだろう(大内さんの本業は学者です)。後に出された二冊は、地球科学に対するもう少し広い領域についてその概要が記されているので、本書を補うための良い参考書になっているともいえる。

 大河内さんの本を読もうとしたもともとの動機は、最近の地球科学の進展具合をやさしく知りたかったためであったのだが、書評サイトHONZ代表の成毛眞氏(元マイクロソフト日本社長)が本書の解説で、著者をサイエンスライターとして激賞しているように、科学的事実や方法だけではなく、そこに至る背景、個人としての科学者が事実を追求するために行う信じがたいほどの生真面目さだけではなく、他者との関係としての人間的エピソードなども挿入されていて、人間の営みとしての科学という側面でも面白い読み物となっている。

 本書の内容については気が向いたら別ブログ(爺~じの本の要約)に纏めておこうかと思っているので省略するが、一言でいってみると、「気候変動の要因については、ここ半世紀ほどの研究によって格段に理解が進んできた。その主な動機は科学者達の探究心に加えて地球環境問題に対する懸念であり、理由は科学技術力と経済力の向上に基づいて可能となったデータの蓄積と高い解析能力にある。分かってきたことのなかで、特に重要なことは、気候変動に人類の活動が関与していることはもはや疑えないこと、気候変動に要する時間は数千年ではなく数十年で十分であったということ、であろう。」本書の記述ではないが、地球史的に見れば、気候変動が数多の生物絶滅をもたらしたことは化石に記録されている。

 付記すると、『地球史が語る近未来の環境』(日本第四期学会、東大出版2007/6)という本があって、2007/6に読んだのだが、今でもこのテーマについて一般人が科学的事実を理解するためにはベストな本だと思っている。サイエンスライター的には書いてないので一般読み物としては取り憑きにくいが、一般人に向けて第四期学会の専門家の人たちが、当時の町田洋会長の下で分担して書いた本なので一読に値する(第四期学というのは、ここ200万年くらいを取り扱う、地球の現代史あるいは人類時代を研究する学問)。因みにこの本は、大河内さんの本書にも、より深く理解するためにと採り上げられている本の一冊に含まれていた。