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ジャスミーナ |
思想・哲学の本を読んで「懐かしさ」を感じることはあまりなかったが、本書は先ず故郷の風景を思い出させてくるようなところから始まっていた。日本思想史研究の碩学の文章をよんで故郷の風景を思い出してどうするのだと言われれば、そうですね、というほかはないが、私にとっては遅蒔きながらの発見であった。読書会でこの本を選定してくれ担当の方に感謝します。
共同体の中や共同体同士の関係には様々なものがあると思うが、政治・社会の視点から「権力関係」に注目すると、自由・平等・権利・義務、統治・国家、公私、討議、合意、○○主義イデオロギー、等々といろんな言葉が浮かんでくるが、これらの多くは明治維新以来西欧から輸入された概念で、実はそれを理解する根拠はそれ以前に自分たちで理解していた概念が前提される、という当たり前のことに気付かされた。「忠誠と反逆」という題名は、ここに気付いた途端腑に落ちてくる。なるほど、権力関係は忠誠と反逆から出発する手もあるな、と。思想・哲学は頭より先に心で受けとめられるものなのだ、ということを思い出した。
故郷は日本であることに間違いないが、縄文時代までさかのぼっても悪いことはないけど、現代日本の思想の理解は明治時代の日本の思想に基礎があった。もちろん、明治時代の思想には西洋からの輸入品とそれまでの日本列島内で育まれてきた諸思想、仏教・儒教思想から、武士社会の規範、江戸諸学派まで、批判的にも色濃く継承されていたはずだ。採り上げられている思想家は福沢諭吉をはじめとして植木枝盛から徳冨蘆花や三宅雪嶺まで広く採り上げられている。そういえば、丸山先生より少し年上だった私の父の書棚に、三宅雪嶺の確か青少年向けの本が並んでいたけど、どこにあるか屋根裏で探してみよう。