ジャスミーナ |
第三部第七篇の読解の冒頭部分だけを転記する。
第七篇 諸収入とそれらの源泉
「資本論」の第一部は「資本の生産過程」第二部は「資本の流通過程」と名付けられている。「資本主義的生産の総過程」と名付けられている第三部の最後の篇である第七篇「諸収入とそれらの源泉」でのポイントは、諸収入つまり、労賃、利潤、地代の源泉は、それぞれ別々に、労働力、資本、土地であるという考えは誤りであって、収入の源泉はただ一つ、労働であるということである。しかし、この最終篇は、単にその名称通りの項目の説明ではなく、それまで展開していたマルクスの経済理論と、第一部と二部においてその都度の論の進み具合に応じて記述されていた歴史観と社会批判とを、この最後の篇において纏めてあるように思える、と同時にマルクスがこの篇で主題にしたかったのは恐らく階級社会についてであったのだと思う。つまり、西欧近代以降に人類がはじめて気づいた自由という普遍的価値が、次第に共有されて実現していくはずであったにもかかわらず、19世紀における最先進国だったイギリスにおいてさえも、物質的配分についても人権の尊重についても著しい格差が存在するということ、この篇に即して言えばすべての人にとって収入の源が同一であるにもかかわらず賃金労働者、資本家、土地所有者という三大階級が存在するということの理由を主題にしたかったのだと思う。しかし、最後の五十二章「諸階級」の書き始めのところで絶筆となっている。
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