良い香りの「芳純」 |
私自身のまとめは別途作成し、第一巻については別ブログ「爺~じの哲学系名著読解」に26回に分割して各章毎に、第二巻については「爺~じの「本の要約・メモ」」に一度に、まとめてある。第三巻については一度にまとめて作成中。
本書を一言で紹介しろと言われたら何と答えたら良いだろう。例えばこういうのはどうだろうか。マルクスは19世紀の西欧において起こっている社会の不幸を目の当たりにして、同じ人間達なのにどうしてこんなことになっているのだろうか、どうすれば良くなるのだろうか、と問い、人間の基本的営みである経済活動の研究を通してその答えを出そうとした。本書は、まず経済学の本である。しかし、富が生み出され、分配され、増殖し、また恐慌が発生して不幸が襲うという現象の説明には、当然のこととして、政治・社会の力関係を理解しなければならないし、将来の社会構想の一部分も述べなければならないことになるから、それらのことも本書には記述してあるが、そのまま現代には通用しないのはマルクスのせいではない。
人間社会における経済活動は、生活に必要なものをつくり出してお互いに交換し合う(多くは貨幣を媒介して)人間活動の一つ、ということになるだろう。マルクス経済理論の根幹は、大きく捉えれば労働価値説と剰余価値説となる。前者は既に17世紀末頃からは西洋世界で一般に信じられている説なので基本的には新しい考えではないが、後者は、労働から生み出された価値のうち、一部が労働する人のものではなくて労働する人に賃金を支払って雇い入れる側の人びとの手に渡る仕組みとなっているのだ、という説。利子や地代などについても、上記の考えから、一言で言えば剰余価値の分け前として説明される。
もう一つ、マルクスの考えには次のような前提があると思う。経済活動の生み出したものの内には価値というものが備わっていて、それが経済活動のいろいろな場面でいろいろな形態として目に見えるものとして現れてくる。例えば、商品、貨幣、支払手形、等々。そしてそれらには、元々備わっている価値とは別に、目に見えないある力が備わっている。資本と呼ばれるものである。この資本が社会的諸関係によって様々な形態をとりながら運動しており、そこには法則がある。つまり、一番基本にある概念としての商品に備わっている価値(価格はその表現)は、人が作りだした理念であって、言ってみれば哲学で昔から問題にして生きた、真・善・美のような類なのかも知れない。とすると、いくら科学の装いを纏っても、その部分に関しての経済学としての疑義は申し立てられそうだ。とても難しそうだけど。
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