自己紹介

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1946年9月、焦土と化した東京都内にて、食糧難と住宅難と就職難の中、運良く生き抜いた両親の新しき時代の一発目として生を受けるも、一年未満で感染症にて死にかける。生き延びたのは、ご近所に住む朝鮮人女性のもらい乳と父親がやっと手にした本の印税全部を叩いて進駐軍から手に入れたペニシリンのおかげであったらしい。ここまでは当然記憶にない。記憶になくても疑えないことである。 物心がついた頃には理系少年になっていた。それが何故なのか定かではないが、誤魔化しうるコトバより、誤魔化しえない数や図形に安堵を覚えたのかもしれない。言葉というものが、単なる記号ではなく、実は世界を分節し、意味と価値の認識それ自体をも可能にするものであることに気付きはじめたのは50歳を過ぎてからであった。 30年間程の企業勤めの後、現在は知の世界に遊ぶ自称哲学徒、通称孫が気になる普通の爺~じ。ブログには庭で育てている薔薇の写真も載せました。

2021年8月11日水曜日

8月10日(火) デービッド・アトキンソン『日本企業の勝算』

東洋経済新報社Kindle版(2020/4/9アップロード)で読んでみた。

希望
 いつの間にか著者が管首相のブレーンとなっていて、有る意味ナルホドと。というわけで本書を読んでみようというわけでもない。2015年頃にアトキンソンさんの『イギリス人アナリスト 日本の国宝を守る』という本を読んでみて、その生き方と経済社会を見る合理的な考え方が面白くて、記憶にあったことが背景にある。

 本書の趣旨と結論とその結論に至るロジックは極めて明快。趣旨は、先進国の中でも高齢化が加速する日本はこのままでは経済的衰退・敗退は必至なので、その立て直し方法を提示すること。結論は「人的資源×生産性向上×企業成長」を実現するしかなく、具体的には企業の規模を大きくすること。ロジックは簡単な経済学を普通に使用すること(=思い込みや個別事情に左右されず、データにもとづいて論理的に考える)。

 なにしろ著者はオックスフォードで日本学を修めた知日派+日本びいきで、卒業後いくつかの金融会社を経巡った後、日本の不良債権問題を指摘しバブル崩壊に警告を発し、しかも誰にも聞いてもらえずそれが的中したことで一時有名になったゴールドマンサックス日本駐在アナリストであり、それから暫くしてお金も貯まったことだしマネーゲームに愛想尽かして(これは私の推定)茶道かなんかに凝っていたら、国宝・重文なとを修理することを生業とする、伝統があって潰れそうな建築屋さんに頼まれて社長を請け負い、実に合理的だが実行はできないと皆が思っていた方法(年齢の高い腕利き職人の給料を減らして若い人に回した等々)を当事者ととことん話し合って納得ずくの上で実行し、見事立て直した人なのだ。今でもそこの社長さんやってる。

 人的資源の向上は、量と質の両方で、日本においては特に経営者に求められること。就職後においても高等教育でスキルアップしたり、企業数を減らして的確な経営者が経営する、等々だが、日本社会の諸事情はそうなってはいない。生産性向上は人口当たりの付加価値の向上だから、極単純化すれば一人当たりの収入(利益+給料)を上げることが根本的に大切なこととなる。ここは民間(特に経営者)の意識もさることながら、政策も大事。非正規雇用等々はその対極思想に基づいた政策。企業成長は、グローバル化した世界での企業競争で勝つことでしか達成出来ず、そのためには力が必要で、力とはお金と知識と情報とetcが必要で、結局規企業規模が大きくなければならない。これは世界で公表されている経済データを冷静かつ真面目に読めば分かることである。提言例⇒中小企業庁を企業育成庁とせよ(ひとかどの大人にならないと世界で生き抜けない、と)。

 高齢化先進国の日本は、その問題点を最初に解決しなければならないという点において先進国になることができる、と著者は確信しているらしい。そう励まされると、ワクワクした気分になってきた気がするかも。






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