差別問題を、被差別者としての女性の視点から掘り下げる、その感性が素晴らしい本。「いつも、闇から光はよく視える」のである。
複雑に入り組んだ現代社会を生きて行くには沢山の知識と考え方を学んでいかなければならない。しかも言語を通して。家父長制下での男性は存在価値を得るには必死にそれら収得してますます生命力を喪失していくが、女性の方は子供を産み育てる存在という生きものとしての規定を免れないだけ、いくら理屈でホントのところを誤魔化そうとしても、誤魔化しきれない存在なのだ。
「とり乱しはリブの合い言葉」。一人の人間の中には互いに矛盾する本音がいくつかあるから、本音の語りは言葉で表現できるものではなくて「とり乱し」を通してしか表現できないものである、から。問題の本質は、人間の差別意識にある。そのことは、被差別者が差別者の、また非差別者同士の「寝首を掻く」(神話の悪女ユーティッドのように)ことをされたくないし、したくない、と言う著者の言葉にも象徴されている。
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